こんにちは。日本文化ラボ(Nippon Culture Lab)、運営者の「samuraiyan」です。
底冷えのする季節になると、京都の街角では「大根焚き(だいこだき)」の文字を見かけるようになりますね。湯気の向こうに見える人々の笑顔、出汁の染みた大根の香り。これぞまさに、京都の冬を象徴する光景ではないでしょうか。「京都 習慣・しきたり 大根焚き」と検索してこのページに辿り着いた皆さんは、きっとこの温かい行事に参加してみたい、あるいはその奥深い文化を知りたいと思っている方々だと思います。
しかし、いざ行こうと計画を立て始めると、「2025年はいつ開催されるの?」「どこのお寺に行けばいいの?」「中止になった場所があるって本当?」といった疑問や不安が出てくることでしょう。特にここ数年は社会情勢の影響もあり、開催状況が流動的です。せっかく京都まで足を運んだのに、目当ての行事がやっていなかった……なんてことになったら悲しいですよね。
そこで今回は、京都の習慣・しきたりに魅せられ、長年この街の行事を追いかけてきた私が、2025年の最新情報から、地元民しか知らないような楽しみ方、さらには家庭で再現するための秘伝レシピまで、徹底的にリサーチしてまとめました。この記事を読めば、まるで現地にいるかのような臨場感で大根焚きを理解し、実際に訪れる際の準備も万端になるはずです。
- 2025年の主要寺院における正確な開催日程と、注意すべき中止情報
- 「中風除け」のご利益や、数百年受け継がれる行事の歴史的背景
- 地元の人々がタッパーを持参する理由と、観光客も実践できる持ち帰りマナー
- 自宅のキッチンで京都の寺院の味を完全再現するためのコツとレシピ
この記事のポイント
京都には季節ごとに独自の京都のしきたりが多く存在しますが、大根焚きはその中でも「食」と「信仰」が密接に結びついた、冬の最も重要な行事の一つです。
京都の習慣・しきたり、大根焚きの2025年最新情報

まずは、今年の大根焚きに参加するために最も重要な「いつ」「どこで」という情報から整理していきましょう。京都の習慣・しきたりとして長く愛されてきた大根焚きですが、寺院ごとに日程や開催方針が異なります。特に2025年は、例年とは異なる動きをしている寺院もあるため、古い情報に惑わされないよう注意が必要です。
2025年の大根焚き日程と中止情報
2025年の冬、京都の大根焚きを巡る旅を計画されている方にとって、スケジュールの確認は何よりも重要です。例年通り開催される場所もあれば、残念ながら諸事情により中止が決まっているお寺もあります。インターネット上には過去の「毎年開催」という情報がそのまま残っていることも多く、それを信じて現地に行ってしまうと、閉ざされた山門の前で呆然と立ち尽くすことになりかねません。
まず、最も注意が必要なのが、右京区鳴滝にある了徳寺(りょうとくじ)です。ここは通称「大根焚寺」とも呼ばれるほど、この行事の代名詞的な存在です。親鸞聖人がこの地を訪れた際に、村人が塩味の大根を焚いておもてなしをしたという逸話が残る、まさに発祥の地の一つと言えるでしょう。例年であれば12月9日と10日の二日間にわたって盛大に行われ、約3,000本もの大根が焚かれるのですが、2025年(令和7年)の大根焚きは「中止」となることが公式サイト等で告知されています。
了徳寺の大根焚きは、他のお寺のような醤油味ではなく、昔ながらの「塩味」で提供されるのが最大の特徴でした。シンプルだからこそ大根の甘みが際立つその味を楽しみにしていたファンも多いはずですが、今年は法要のみ、あるいは行事自体が見送られる形となります。来年度以降の再開を願いつつ、今年は他のお寺へ足を運ぶ計画に切り替える必要がありますね。
また、右京区御室にある三寳寺(さんぽうじ)についても注意が必要です。かつては12月の第一日曜あたりに、柚子ご飯と共に大根焚きが振る舞われ、多くの人で賑わっていましたが、2021年頃から振る舞いは中止されており、2025年に関しても法要のみが営まれる可能性が高い状況です。「厄落としの大根焚き」として親しまれていただけに寂しいですが、これも時代の変化とともに変わる習慣・しきたりの一面なのかもしれません。
一方で、年明けに行われる法住寺(東山区)の「無病息災大根焚き」は、2026年1月18日(日)に予定されています。こちらは1月中旬の開催ですので、12月の旅行で訪れることはできませんが、新春の京都を訪れる方にはぜひおすすめしたい行事です。
情報の確認について
開催状況は天候や社会情勢によって直前に変更される場合もあります。出発前には必ず各寺院の公式サイトや、京都市観光協会の最新イベント情報を確認することをお勧めします。「行ったらやってなかった」という事態を避けるためにも、事前のダブルチェックを習慣にしましょう。
千本釈迦堂など主要寺院の開催状況

中止の情報をお伝えして少し心配にさせてしまったかもしれませんが、安心してください。京都の冬を代表する大根焚きは、今年も主要な寺院で元気に開催されます。中でも、最も多くの参拝者で賑わい、京都最大規模と言われるのが、上京区にある千本釈迦堂(大報恩寺)です。
千本釈迦堂の大根焚きは、毎年12月7日と8日に行われます。これは、お釈迦様が悟りを開いた日を記念する「成道会(じょうどうえ)」という法要に合わせたものです。境内には直径1メートルはあろうかという巨大な大釜がいくつも据えられ、もうもうと湯気を上げながら数千本の大根が煮込まれる光景は、まさに圧巻の一言。その湯気の中にいるだけで、体中の邪気が払われるような気さえしてきます。
2025年の主要寺院の開催スケジュールを以下の表にまとめましたので、旅の計画にお役立てください。
| 寺院名 | 所在地 | 2025年 開催日程 | 時間 | 料金(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 千本釈迦堂 (大報恩寺) |
上京区 | 12月7日(日) 12月8日(月) |
10:00~16:00 | 1,000円 | 京都最大規模。梵字が書かれた大根を加持祈祷。持ち帰りも可。 |
| 妙満寺 | 左京区 | 12月7日(日) | 10:00~ | 1,000円 | 成道会に合わせて実施。美しい庭園「雪の庭」でも有名。 |
| 鈴虫寺 (華厳寺) |
西京区 | 12月14日(日) | 9:30~15:30 (無くなり次第終了) |
無料 (要拝観料) |
「納めの地蔵」の一環。法要本番(24日)とは日程が異なるので注意。 |
千本釈迦堂の大根は、昆布出汁をベースに醤油でじっくりと煮込まれた、色の濃い「あめ色」が特徴です。京都特有の大きな油揚げと一緒に炊き合わせられており、一口食べるとジュワッと出汁の旨味が口いっぱいに広がります。「これぞ京都の冬の味!」と思わず唸ってしまう美味しさですよ。
また、妙満寺(左京区岩倉)でも12月7日に開催されます。こちらは「雪の庭」で有名な寺院で、比叡山を借景とした美しい景色と共に大根焚きを楽しむことができます。市内中心部からは少し離れていますが、その分、落ち着いた雰囲気の中で京都の習慣・しきたりに触れられる穴場スポットとも言えるでしょう。
行事の由来と中風除けのご利益

さて、そもそもなぜ、冬の寒い時期にわざわざお寺に集まって熱々の大根を食べるのでしょうか。「美味しいから」というのも立派な理由ですが、京都の習慣・しきたりには、もっと深い歴史的背景と切実な願いが込められています。
大根焚きの最大のキーワードは「中風(ちゅうぶ)除け」です。「中風」とは、現代医学で言うところの脳卒中や脳血管疾患、それに伴う麻痺などを指す言葉です。暖房設備が整っていなかった昔の京都の冬は、今以上に厳しく、「底冷え」という言葉通り、骨の髄まで冷える寒さでした。急激な寒さは血管を収縮させ、高血圧を引き起こし、多くの人々が中風で倒れたことは想像に難くありません。そんな中、冬の貴重な栄養源であり、体を温める作用のある大根を食べて、無病息災を祈るようになったのです。
この行事の起源には、主に二つの大きな流れがあります。
一つは、親鸞聖人にまつわる「おもてなし」の心です。これは中止となってしまった了徳寺に伝わる逸話ですが、鎌倉時代、親鸞聖人がこの地を訪れた際、村人が何もご馳走するものがない中で、塩味で炊いた大根を精一杯のおもてなしとして差し出しました。聖人はその心の温かさに大変喜ばれ、ススキの穂を筆代わりにして名号を書き残されたと言います。豪華な食事ではなく、身近な食材で心を込めてもてなす。この精神こそが、大根焚きの根底に流れる京都人の優しさなのかもしれません。
もう一つは、密教や法華経信仰に基づく「魔除け」の儀式です。千本釈迦堂の縁起によれば、鎌倉時代の慈禅上人が、大根の切り口に梵字(サンスクリット文字)を書いて魔除けとしたことが始まりとされています。現在でも千本釈迦堂では、釈迦如来を表す種字「バク」を朱書きした大根を法要で祈祷し、それを大釜に入れて一緒に炊き上げます。仏様の力が宿った大根を体内に取り込むことで、悪魔や病気を追い払うという「共食儀礼(神仏と共に食事をする儀式)」としての側面が強いのです。
医学的な視点から見る大根焚き
実はこの習慣、現代の栄養学から見ても非常に理にかなっています。冬の大根は寒さから身を守るために糖分を蓄えて甘くなり、ビタミンCやジアスターゼ(消化酵素)も豊富になります。また、温かい根菜を食べることは深部体温を上げ、血流を改善して免疫力を高める効果が期待できます。昔の人々は経験的に「大根焚きを食べると冬を元気に越せる」ことを知っていたのでしょう。
持ち帰り容器を持参する文化

大根焚きの会場に行ってみると、ある不思議な光景を目にすることになります。それは、多くの地元の方々が、カバンからMy鍋や大きめのタッパーを取り出している姿です。「えっ、ここでお弁当?」と驚かれるかもしれませんが、これこそが京都の習慣・しきたりにおける「大根焚き」のリアルな姿なのです。
京都では、大根焚きを単にその場で食べるイベントとしてだけでなく、「家族へのお土産」や「ご近所へのお裾分け」として持ち帰る文化が深く根付いています。病気で来られなかったおじいちゃんやおばあちゃん、学校や仕事に行っている家族にも、無病息災のご利益がある大根を食べさせてあげたい。そんな家族を想う温かい気持ちが、この「鍋持参」というスタイルに表れているんですね。
千本釈迦堂などでは、正式に持ち帰りが認められており、持ち帰り専用の容器(有料)も用意されていますが、常連さんはやはり使い慣れた自宅の容器を持参します。最近では、プラスチックごみの削減というエコな観点からも、このマイ容器スタイルが見直されています。
もし皆さんが旅行者として参加される場合でも、持ち帰りは可能です。ホテルに帰ってから夜食としてゆっくり食べたい場合や、あまりに混雑していてその場で食べるのが難しい場合など、持ち帰りの選択肢があると非常に便利です。汁漏れを防ぐために、密閉性の高いスクリュー式の保存容器(ジップロックコンテナーなど)と、それを入れるビニール袋を持参することをお勧めします。ただし、あくまで「食品」ですので、その日のうちに早めに食べ切ることが鉄則ですよ。
行列に並んでいる間、地元のおばあちゃんが「あんた、えらい立派な鍋もっとるなぁ」なんて会話を交わしているのを見るのも、この行事ならではのほっこりする風景です。
鈴虫寺や三千院など各寺院の特徴

主要な千本釈迦堂以外にも、京都には個性豊かな大根焚きを行っている寺院があります。それぞれの特徴を知って、自分の好みに合った場所を選んでみるのも楽しいですね。
まずは、一年を通じて鈴虫の音色が響くことで有名な西京区の「鈴虫寺(華厳寺)」です。ここでは年末の締めくくりとして「納めの地蔵」法要が行われますが、大根焚きの振る舞いはその法要当日(12月24日)ではなく、少し前の日曜日に設定されることが多いのが特徴です。2025年は12月14日(日)に大根焚きの振る舞いが行われます。間違えて24日に行ってしまうと、法要には参加できても大根焚きは終わっている…ということになりかねませんので、日程の確認は必須です。鈴虫寺は恋愛成就の「幸福地蔵」でも有名ですので、良縁祈願と合わせて無病息災を祈る若い女性やカップルの姿も多く見られます。
そして、少し時期をずらして冬の京都を深く味わいたい方におすすめなのが、大原の里にある「三千院」です。こちらでは年明けの2月、初午(はつうま)に合わせて「初午大根焚き」が開催されます。
| 寺院 | 行事名 | 2026年 日程 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 三千院 | 初午大根焚き | 2月7日(土)~11日(火・祝) | 大原の里の雪景色、有機栽培の地元大根を使用 |
2月の大原といえば、市内中心部よりもさらに気温が低く、一面の雪景色となることも珍しくありません。そんな凛とした空気の中でいただく大根焚きは、まさに絶品。三千院の大根焚きに使われるのは、地元・大原の畑で有機農法によって大切に育てられた純白の大根です。寒暖差の激しい大原で育った大根は、驚くほど甘みが強く、きめ細やかな肉質をしています。出世金色不動明王の前で加持祈祷された熱々の大根を、雪を見ながらハフハフと頬張る体験は、他では味わえない冬の京都の極みと言えるでしょう。
京都の習慣・しきたりとしての大根焚きを深く味わう
ここまでは「いつ」「どこへ行くか」という情報を中心にお伝えしてきましたが、ここからは「どう味わうか」という、よりディープな視点で大根焚きを掘り下げていきたいと思います。京都の習慣・しきたりが大好きな私が、味付けの秘密や家庭での再現方法について、熱く語らせていただきます。
醤油や塩など味付けの違い
「大根焚き」と一言で言っても、実はどこのお寺でも同じ味というわけではありません。お寺の宗派や由緒によって、味付けには明確な違い、いわば「流派」のようなものが存在します。大きく分けると、「塩味」と「醤油味」の二大勢力があるのです。
まず、残念ながら今年は中止となってしまった了徳寺に代表されるのが「塩味(古式)」です。これは、親鸞聖人に振る舞われた当時の味を再現したもので、昆布出汁と塩だけで大根を煮るという、究極にシンプルな調理法です。余計な調味料を使わない分、大根そのものが持つ甘みやほろ苦さ、香りがダイレクトに伝わってきます。精進料理の「淡味(たんみ)」の精神にも通じる、素材への敬意が感じられる味わいですね。
一方、現在の大根焚きの主流となっているのが、千本釈迦堂などで提供される「醤油味」です。こちらは昆布出汁をベースに、濃口醤油、みりん、砂糖などを加えて甘辛く炊き上げたものです。なぜ醤油味が主流になったのでしょうか。一つには、大量の大根を大釜で長時間煮込む際、醤油味の方が味が安定しやすく、日持ちもしやすいという実利的な理由があったと考えられます。また、極寒の屋外で行われる行事ですから、冷え切った参拝者の体には、塩分と糖分がしっかり補給できる甘辛い味付けの方が、より美味しく、力強く感じられたのかもしれません。
真っ黒に近い色になるまで煮込まれた醤油味の大根は、見た目ほど塩辛くはなく、出汁の旨味と大根の甘みが渾然一体となった、深く優しい味わいがします。もし複数のお寺を巡るチャンスがあれば、この味の違いを食べ比べてみるのも、通な楽しみ方と言えるでしょう。
家庭で再現する大根焚きレシピ

「京都まで行きたいけれど、どうしても日程が合わない」「遠方に住んでいてなかなか行けない」という方も多いと思います。そんな時は、自宅のキッチンで大根焚きを再現して、家族みんなで無病息災を祈ってみてはいかがでしょうか。私が試行錯誤の末に辿り着いた、お寺のような深い味わいを出すための「醤油味」再現レシピをご紹介します。
最大のポイントは、「下茹で」と「煮含める(一度冷ます)」という二つの工程にあります。
材料(4人分目安)
・大根:1/2本(太い部分、できれば聖護院大根)
・油揚げ:大判1枚(京都風の厚手のもの)
・だし汁(昆布):1000ml
・濃口醤油:大さじ3
・薄口醤油:大さじ1(塩味と風味の調整)
・みりん:大さじ2
・砂糖(またはラカント):大さじ1.5~2(お寺の味は甘めです!)
・米のとぎ汁:適量(下茹で用)
作り方の手順とコツ
- 切り出しと面取り: 大根は3cm~4cmほどの厚めの輪切りにします。皮は思い切って厚くむきましょう。皮の近くにある筋を取り除くことで、口当たりが格段に良くなります。そして、角を削ぎ落とす「面取り」を行います。これで長時間煮込んでも煮崩れしにくくなります。
- 丁寧な下茹で: 鍋に大根とたっぷりの米のとぎ汁(なければ水にお米を一つまみ入れる)を入れ、竹串がスッと通るまで弱火でじっくり下茹でします。これによって大根特有の苦味やえぐみが抜け、色が白く美しく仕上がり、後の味染みも良くなります。
- 油揚げの準備: 油揚げはザルに乗せて熱湯を回しかけ、しっかり油抜きをします。これを大きめの三角形に切ります。京都の大根焚きにおいて、油揚げは単なる具ではなく、出汁にコクを与える重要な役割を持っています。
- 本炊き: 鍋にだし汁と調味料を全て入れ、下茹でした大根と油揚げを加えます。落とし蓋をして、中火から弱火でコトコト煮込みます。
- 「冷まし」の魔法: 大根が良い色になってきたら、ここで一度火を止めます。そして、完全に冷めるまで放置してください。 実は、煮物というのは加熱している時ではなく、冷めていく過程で浸透圧によって味が食材の中に染み込んでいくのです。この工程を経ることで、あのお寺のような「中まで味が染みた大根」が完成します。食べる直前にもう一度温めれば完璧です。
聖護院大根と油揚げのポイント

より本格的に、京都の空気感まで再現したいなら、食材選びにもこだわってみましょう。もし手に入るなら、ぜひ「聖護院(しょうごいんだいこん)大根」を使ってみてください。
聖護院大根は、カブのように丸い形をした京都の伝統野菜です。一般的な青首大根に比べて肉質が非常に緻密で柔らかく、煮崩れしにくいのが特徴です。そして何より、加熱した時の甘みが段違いです。京都の農家さんが170年以上前に生み出したこの品種は、まさに煮物にするために生まれてきたような大根なのです。
(出典:京都市情報館『京の伝統野菜について 聖護院だいこん』)
そして、忘れてはいけない名脇役が「おあげさん(油揚げ)」です。京都の家庭料理において、油揚げは「肉の代わり」になるほど存在感のある食材です。スーパーで売っているペラペラの薄揚げではなく、「京揚げ」として売られているような、ふっくらと肉厚で大きなものを選んでください。この厚みのある油揚げが、甘辛い煮汁をたっぷりと吸い込み、噛んだ瞬間にジュワッと口の中に旨味を放出してくれるのです。大根と油揚げ、この二つの相乗効果こそが大根焚きの真髄と言えるでしょう。
参加時の服装とマナー
最後に、実際に現地へ行って参加する際のアドバイスをお伝えします。何度も言いますが、京都の冬は寒いです。特に大根焚きは屋外や吹きさらしのテント内で行われることが多いため、食事中といえども寒さとの戦いになります。
防寒対策は過剰なくらいで丁度いいと考えてください。足元はコンクリートや土の地面から冷気が上がってくるため、厚手の靴下やブーツが必須です。首元を温めるマフラー、手袋、そして背中や腰に貼るカイロがあれば心強いでしょう。熱々の大根を食べると一時的に体が温まって汗ばむこともありますが、食べ終わるとすぐに汗が冷えてしまいますので、吸湿発熱素材のインナーなどを活用して、汗冷え対策もしておくと安心です。
また、会場は多くの人で混雑します。席数は限られていますので、「譲り合い」と「相席」が基本のマナーです。グループで席を占領したり、食べ終わった後も話し込んで長居したりするのは野暮というもの。「食べ終わりましたので、どうぞ」と次の方に席を譲るスマートな振る舞いこそが、京都の「粋」であり、仏様の前での正しい行いです。あくまでこれは「仏事(行事)」であり、レストランの食事ではありません。いただく前には手を合わせ、感謝の気持ちを持って、一年の無事を祈りながら味わいましょう。
京都の習慣・しきたり、大根焚きの魅力を再確認
今回は、京都の習慣・しきたりとして欠かせない「大根焚き」について、2025年の最新情報から歴史、そして家庭での楽しみ方まで幅広くご紹介しました。
数百年の歴史を持つこの行事は、単なる観光イベントではありません。厳しい冬を乗り越えるための先人の知恵であり、家族や地域の絆を確認し合う大切な場でもあります。湯気の向こうにある人々の祈りや温かさに触れることこそが、大根焚きの本当の魅力なのかもしれません。
2025年の冬、千本釈迦堂の大釜の前でハフハフと言いながら大根を頬張るのも良し、自宅のキッチンでコトコトと鍋を煮込みながら家族の健康を祈るのも良し。形はどうあれ、この大根焚きという素晴らしい文化を通じて、皆さんが京都の奥深い精神性に触れ、心身ともに温かい冬を過ごされることを願っています。

