水無月は、白いういろうの上に小豆をのせた京都の郷土菓子です。特に6月30日の「夏越の祓(なごしのはらえ)」に食べ、半年間の罪や穢れを祓い、残る半年の無病息災を願います。
特徴的な三角形は氷のかけら、小豆の赤色は邪気払いを表すとされています。冷蔵設備がなかった時代に、貴重な氷を口にできなかった人々が、ういろうを氷に見立てたことが水無月の由来として伝えられています。
この記事では、京都で夏越の祓に水無月を食べる理由、三角形と小豆の意味、夏越の祓と茅の輪くぐり、水無月の種類、購入時の注意点、家庭で作れる簡単レシピを解説します。
最初に結論
- 京都では6月30日の夏越の祓に水無月を食べる
- 夏越の祓は半年間の罪や穢れを祓う神事
- 三角形は氷のかけらを表すとされる
- 小豆の赤色には邪気払いの意味があるとされる
- 残る半年の無病息災を願う行事菓子として受け継がれている
- 販売期間、原材料、保存方法は店舗ごとに異なる
情報確認日水無月と夏越の祓に関する情報は、2026年9月9日に農林水産省、神社本庁、京都市公式観光情報、和菓子店の公式情報を確認しています。神事の日程や作法、水無月の販売期間は年や神社、店舗によって異なります。
京都で水無月を食べる理由
京都で水無月を食べる主な理由は、6月30日に行われる夏越の祓と結び付いているからです。
夏越の祓では、1月から6月までに身についたと考えられる罪や穢れを祓い、残る半年を健やかに過ごせるよう願います。
農林水産省は、水無月を京都府内で伝統的に食べられてきた郷土菓子として紹介しています。白いういろうの上に小豆をのせ、三角形に切り分けるのが基本的な形です。

半年間の穢れを祓う行事菓子
夏越の祓は、年に2回行われる大祓のうち、6月に行われる神事です。12月の大祓は「年越の祓」と呼ばれます。
神社本庁は、大祓について、日々の生活の中で身についた穢れや災厄の原因となる罪や過ちを祓い、清らかな状態を取り戻すための神事と説明しています。
昔の夏は、暑さだけでなく、食べ物の傷みや病気などに対する不安も大きな季節でした。夏を迎える前に身を清め、無事に過ごせるよう願うことには、生活上の切実な意味があったと考えられます。
水無月は、この夏越の祓に合わせて無病息災を願うための食べ物として、京都の暮らしに根付いてきました。
夏越の祓と水無月の関係夏越の祓は心身を清める神事、水無月は残る半年の無病息災を願って食べる行事菓子です。水無月を食べること自体が神社の神事になるわけではありませんが、参拝と食文化が結び付いた京都の季節習慣として受け継がれています。
水無月の三角形と小豆の意味
水無月には、形と色の両方に夏越の祓と結び付く意味があります。
| 部分 | 一般的に説明される意味 |
|---|---|
| 三角形 | 氷室から切り出した氷のかけら |
| 白いういろう | 白い氷を表現したもの |
| 小豆 | 赤色による邪気払い |
三角形は氷のかけらを表す
水無月の三角形は、氷室に保存されていた氷のかけらを模したものとされています。
農林水産省によると、平安時代の宮中では、京都市北区西賀茂地区などの氷室に蓄えた氷を口にして暑気払いをしていました。
冷凍庫のない時代に、冬の氷を夏まで保存するには大きな手間がかかります。そのため、夏の氷は限られた人しか口にできない貴重なものでした。
そこで、庶民が白いういろうを三角形に切り、氷のかけらに見立てて暑気払いをしたことが、水無月の由来として伝えられています。
小豆の赤色は邪気払いを表す
ういろうの上にのせる小豆の赤色には、邪気を祓う意味があるとされています。
日本では、小豆を使った赤飯や小豆粥などが、節目の行事や健康を願う場面で食べられてきました。水無月でも、赤い小豆が厄除けと無病息災への願いを表します。
つまり水無月は、氷を表す三角形と、邪気払いを表す小豆を組み合わせた行事菓子です。
水無月に込められた願い
- 氷を模した形で暑気を払う
- 小豆の赤色で邪気を祓う
- 半年間の罪や穢れを清める
- 残る半年の無病息災を願う
水無月と氷室の節会
水無月の由来を理解するうえで重要なのが、「氷室(ひむろ)」と宮中の氷の文化です。
氷室とは、冬に切り出した天然氷を夏まで保存するための施設です。地面を掘った場所などに氷を収め、藁や木の葉などを使って溶けにくくしていました。
鶴屋吉信の公式情報では、宮中で陰暦6月1日に氷室の氷が供される「氷室の節会」が行われ、この文化が民間へ伝わり、氷片を模した菓子を食べて無病息災を願う習慣につながったと説明されています。

現在なら氷を簡単に手に入れられますが、当時の氷は極めて貴重でした。本物の氷を用意する代わりに、菓子の形と色で氷を表現したところに、日本の食文化に見られる「見立て」の考え方があります。
水無月の由来を簡単に整理
- 冬の天然氷を氷室で保存した
- 夏に宮中へ氷が運ばれた
- 氷は庶民には手に入りにくい貴重品だった
- 白いういろうを三角形にして氷片に見立てた
- 邪気払いを表す小豆をのせた
- 夏越の祓の行事菓子として定着した
なぜ6月を水無月と呼ぶのか
旧暦6月の異称も「水無月」です。
雨の多い時期に「水が無い月」と書くことを不思議に感じるかもしれません。
よく紹介される説の一つが、「無(な)」を現代語の「の」に相当する連体助詞とみなし、「水無月」を「水の月」と解釈するものです。
田に水を引く時期と結び付ける説明もありますが、水無月という月名の語源には複数の説があり、一つに確定しているとは言い切れません。
月名と菓子名を混同しない「水無月」は旧暦6月の呼び名であると同時に、京都の行事菓子の名前でもあります。月名の語源には諸説ありますが、菓子の三角形が氷を表し、小豆が邪気払いを表すことは、農林水産省や京都の和菓子店の公式情報でも紹介されています。
夏越の祓では何をする?
夏越の祓では、神社によって大祓式、茅の輪くぐり、人形を使った祓いなどが行われます。
ただし、実施日、受付方法、茅の輪をくぐる順序、唱え詞、人形の扱いは神社によって異なります。全国一律の方法があると考えず、参拝する神社の案内を優先してください。
茅の輪くぐり
茅の輪は、茅などを束ねて作る大きな輪です。神社によっては、無病息災を願って茅の輪を3回くぐります。
一般的には左、右、左と8の字を描くように回る方法が知られていますが、すべての神社で同じとは限りません。

参拝時の基本
- 境内の案内板を最初に確認する
- 神職の案内があれば従う
- 参拝者の流れを妨げない
- 茅の輪の茅を勝手に抜き取らない
- 神事中の撮影は神社のルールに従う
人形による祓い
大祓では、人の形に切った紙などを「人形(ひとがた)」として使うことがあります。
一般的には、人形に氏名などを記入し、体をなでたり息を吹きかけたりして、自分の罪や穢れを移すとされます。その後の扱いは、神社へ納める、神職が祓う、川へ流すなど神社によって異なります。
氏名、年齢の書き方、初穂料、息を吹きかける回数も一律ではありません。境内の記入例や神社の説明を確認してください。
京都の神社ごとの日程や詳しい参拝方法は、京都の夏越の祓と茅の輪くぐり|神社・日程・作法を解説で紹介しています。
水無月は6月30日以外にも買える?
水無月は6月30日に食べる行事菓子ですが、販売日が6月30日だけとは限りません。
農林水産省は、6月30日以外にも京都府内の和菓子店やスーパーマーケットなどで販売されていると説明しています。
店舗によっては6月上旬から販売し、6月30日で終了する場合があります。通年販売する店や、白以外に黒糖・抹茶などを用意する店もあります。
| 確認項目 | 注意点 |
|---|---|
| 販売期間 | 6月限定、期間限定、通年など店舗により異なる |
| 種類 | 白、黒糖、抹茶など取扱商品が異なる |
| 予約 | 6月30日は予約を受け付ける店もある |
| 消費期限 | 当日または短期間の商品が多い |
| 保存方法 | 常温・冷蔵など商品表示に従う |
| 配送 | 生菓子のため配送できない商品もある |
6月30日は早めの購入が安心
6月30日は水無月を求める人が増えるため、希望する種類が売り切れる可能性があります。
購入する店が決まっている場合は、販売時間、予約の可否、受取方法を事前に確認してください。
鶴屋吉信が2026年に案内した水無月は、店舗販売の商品で、オンラインショップでの取扱いはありませんでした。また、日持ちについても短い期間が案内されていました。
これは一つの店舗の商品例です。すべての水無月に同じ条件が当てはまるわけではありません。
保存方法は店の表示を優先水無月は水分を含む生菓子です。「必ず冷蔵」「必ず常温」と一律には判断できません。購入時に消費期限と保存方法を確認し、高温になる車内や屋外へ長時間置かないようにしてください。
水無月の種類と選び方
基本の水無月は白いういろうと小豆の組み合わせですが、現在は黒糖や抹茶などさまざまな種類があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 白 | 氷を表す基本的な水無月 |
| 黒糖 | 黒糖の香りとコクを楽しめる |
| 抹茶 | 抹茶の色と風味を加えたもの |
| 葛を使うタイプ | 透明感や涼しげな食感を表現する商品がある |
同じ「水無月」という名前でも、原材料、甘さ、ういろうの硬さ、小豆の量は商品によって異なります。
食感や原材料を重視する場合は、店頭の商品説明や原材料表示を確認しましょう。
水無月以外のくずきり、水羊羹、わらび餅なども比較したい方は、京都の夏の和菓子ガイド|水無月・くずきり・水羊羹・涼菓の名店をご覧ください。
家庭で作る水無月の簡単レシピ
水無月は、薄力粉、片栗粉、砂糖、水、甘く煮た小豆を使って家庭でも作れます。
次の分量は家庭向けの作りやすい一例です。和菓子店の商品と同じ配合や食感を再現するものではありません。
材料
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 100g |
| 片栗粉 | 20g |
| 砂糖 | 70~80g |
| 水 | 300ml |
| 甘納豆または甘く煮た小豆 | 120~150g |
15~18cm程度の耐熱容器、蒸し器、布巾、こし器を用意します。容器には薄く油を塗るか、オーブン用シートを敷いておくと取り出しやすくなります。
作り方
- 粉類を混ぜるボウルへ薄力粉、片栗粉、砂糖を入れ、泡立て器でよく混ぜます。
- 水を少しずつ加える水を数回に分けて加え、だまが残らないように混ぜます。
- 生地をこすなめらかな食感にするため、生地をこし器でこします。
- 生地を少量取り分ける小豆を固定するため、仕上げに使う生地を全体の4分の1程度取り分けます。
- 最初の生地を蒸す残りの生地を耐熱容器へ流し、十分に蒸気が上がった蒸し器で約10分蒸します。
- 小豆をのせる表面が固まり始めたら小豆を均等に並べ、取り分けた生地を上から静かに流します。

- 再び蒸すさらに約20分蒸します。中心まで火が通り、生地が固まっていることを確認してください。
- 冷まして切る容器から取り出して冷まし、四角形に切ったあと、対角線で切って三角形にします。
失敗しにくくするポイント
- 水は一度に入れず少しずつ混ぜる
- 生地をこして粉のだまを取り除く
- 小豆の水分を軽く切ってから使う
- 最初に生地だけを蒸して小豆の沈み込みを防ぐ
- 蒸し器の蓋を布巾で包み、水滴が生地へ落ちるのを防ぐ
- 熱いまま切らず、十分に冷ましてから切る
電子レンジでも作れる?
耐熱容器と電子レンジを使うレシピもありますが、加熱時間は電子レンジの出力、容器の形、材料の量によって変わります。
加熱不足では粉に十分な熱が通らず、反対に加熱しすぎると硬くなります。初めて作る場合は、加熱状態を確認しやすい蒸し器を使う方法が無難です。
黒糖・抹茶へのアレンジ
黒糖水無月を作る場合は、砂糖の一部または全部を黒糖へ変更できます。ただし、黒糖の種類によって甘みと水分量が変わります。
抹茶水無月は、抹茶を少量の水でよく溶いてから生地へ加えると、だまになりにくくなります。
最初は基本の白い水無月を作り、生地の硬さを確認してからアレンジするのがおすすめです。
水無月のアレルギーと保存上の注意
水無月は商品やレシピによって、薄力粉、小麦でんぷん、米粉、葛粉、片栗粉などが使われます。
「ういろうだから米粉だけ」とは限りません。小麦アレルギーがある場合は、名称や見た目だけで判断せず、必ず原材料表示を確認してください。
購入・調理前の確認事項
- 小麦が含まれていないか
- 同じ工場や調理場で扱うアレルゲン
- 小豆製品に含まれる原材料
- 消費期限または賞味期限
- 常温・冷蔵などの保存方法
- 持ち歩ける時間
家庭で作る場合も、薄力粉を別の粉へ単純に置き換えると、固まり方や食感が変わります。食物アレルギーに対応したい場合は、対応レシピを使用し、原材料と調理器具による混入にも注意してください。
水無月に関するよくある質問
京都ではなぜ6月30日に水無月を食べるのですか?
6月30日の夏越の祓に合わせ、半年間の罪や穢れを祓い、残る半年の無病息災を願うためです。
水無月の三角形にはどんな意味がありますか?
氷室から切り出した氷のかけらを表すとされています。貴重な氷を口にできなかった人々が、白いういろうを氷に見立てたと伝えられています。
水無月の小豆にはどんな意味がありますか?
小豆の赤色には邪気を祓う意味があるとされています。
水無月は6月30日しか買えませんか?
6月30日以外にも販売する店舗があります。販売開始日、終了日、通年販売の有無は店舗によって異なります。
水無月は京都以外でも食べられますか?
京都府の郷土菓子として知られていますが、現在は京都以外の和菓子店や百貨店などで販売される場合もあります。
茅の輪は必ず左・右・左の順でくぐりますか?
左、右、左と3回くぐる方法が広く知られていますが、神社によって作法や唱え詞が異なります。現地の案内に従ってください。
水無月は冷蔵庫で保存すればよいですか?
商品によって異なります。冷蔵によって生地が硬くなる場合もあるため、購入した店舗の商品表示と案内に従ってください。
水無月に小麦は入っていますか?
小麦粉や小麦でんぷんを使う商品があります。一方、配合は店舗によって異なるため、原材料表示を確認してください。
京都で水無月を食べる理由まとめ
京都で6月30日の夏越の祓に水無月を食べるのは、半年間の罪や穢れを祓い、残る半年を健やかに過ごせるよう願うためです。
三角形の白いういろうは氷室の氷、小豆の赤色は邪気払いを表すとされています。
記事の要点
- 夏越の祓は6月に行われる大祓
- 水無月は京都府の郷土菓子
- 三角形は氷のかけらを表す
- 小豆の赤色は邪気払いを表す
- 6月30日以外に販売する店舗もある
- 茅の輪くぐりの作法は参拝する神社の案内を優先する
- 原材料、消費期限、保存方法は商品ごとに確認する
- 家庭では薄力粉、小豆などを使って作ることもできる
神社で夏越の祓に参列し、帰りに水無月を購入する方法もあれば、自宅で水無月を作りながら半年を振り返る方法もあります。
大切なのは、形だけをまねることではなく、無事に過ごせた半年に感謝し、これからの健康を願うことです。
京都の和菓子全体については、京都の和菓子ガイド|種類・歴史・季節の京菓子を解説も参考にしてください。
参考にした主な公式情報
情報確認日:2026年9月9日

