ワコールとは?企業文化「相互信頼」と人間科学の強みを解説

京都発ワコールの企業文化と人間科学、ものづくりを表現したデザイン開発風景 企業文化

京都企業の企業文化シリーズ「ワコール」個別分析ページです。ワコールは、京都市南区に本社を置くワコールグループの中核ブランド・事業会社です。現在は株式会社ワコールホールディングスがグループ経営を担い、株式会社ワコールが国内のインナーウェアを中心とする事業を展開しています。

この記事では、ワコールの企業文化を象徴する「相互信頼」、創業者・塚本幸一氏の思想、人間科学研究、ものづくりの強み、SCANBE、最新業績、年収、就職・転職、将来性まで企業研究に役立fつ形で整理します。

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こんにちは。日本文化ラボ(Nippon Culture Lab)、運営者の「samuraiyan(さむらいやん)」です。

京都企業の企業文化を見ていくと、それぞれの会社を象徴する言葉があります。

京セラには「アメーバ経営」と京セラフィロソフィー。

オムロンには「SINIC理論」。

SCREENには「思考展開」。

堀場製作所には「おもしろおかしく」。

では、ワコールは何でしょうか。

私がワコールという企業を理解するうえで、最も重要だと考える言葉が「相互信頼」です。

ワコールは、単にブラジャーやインナーウェアを作ってきた会社ではありません。

お客さまを知る。

働く人を信じる。

取引先と長い関係を築く。

そして人のからだを長期間にわたって研究する。

こうした「人を理解し、信頼関係を積み重ねる」という姿勢が、ワコールの企業文化とものづくりを支えてきました。

創業は1946年。

第二次世界大戦から復員した塚本幸一氏が、京都で婦人洋装装身具の商売を始めたのが原点です。

1949年に婦人洋装下着へ本格的に進出し、戦後日本で女性の服装が和装から洋装へ変わっていく中で成長しました。

そして1964年には、まだ「データ」という言葉が現在ほど一般的ではなかった時代に、日本人女性のからだを科学的に研究する「製品研究部」を設置します。

現在のワコール人間科学研究開発センターです。

そこから60年以上にわたり人のからだを計測し続け、そのデータを商品開発へ生かしてきました。

さらに現在は、3Dボディスキャン「SCANBE」、コンディショニングウェア「CW-X」、新技術「Melooop」などを通じて、従来の下着メーカーという枠を超えようとしています。

この記事では、ワコールの歴史や商品だけでなく、なぜ京都発のワコールが長く支持されてきたのかを、企業文化の視点から見ていきます。

この記事でわかること

  • ワコールとワコールホールディングスの違い
  • ワコールが京都で創業した歴史
  • 企業文化の中心「相互信頼」とは何か
  • 創業者・塚本幸一氏が大切にした考え方
  • 人間科学研究がワコールの強みになった理由
  • MLCCや半導体企業とは違う京都企業としての強み
  • SCANBEとボディデータの活用
  • 「下着のワコール」を超える新事業
  • 2026年3月期と2027年3月期第1四半期の最新業績
  • ワコールとワコールホールディングスの平均年収の違い
  • 就職・転職で確認したいポイント
  • ワコールグループの将来性

  1. ワコールとは?京都発のインナーウェア企業
  2. ワコールの歴史|1946年、戦後の京都から始まった
    1. 「ワコール」という名前の由来
  3. ワコールの企業文化「相互信頼」とは?
    1. 1962年に「相互信頼経営」を断行
  4. 創業者・塚本幸一氏の思想|平和と美しさを結びつけた
  5. ワコールの強み1|60年以上続く人間科学研究
    1. 長期間、同じ人を測り続けたデータもある
  6. ワコールの強み2|感性と科学を組み合わせる
  7. ワコールの強み3|販売員の接客知見までデータとして蓄積する
  8. SCANBE|「測って売る」から「自分を知る」サービスへ
  9. 「下着のワコール」から「からだとこころのソリューション企業」へ
  10. Melooop|下着メーカーの技術を自動車へ
  11. CW-X|人間科学から生まれたコンディショニングウェア
  12. 現在のワコールは変革期|従来型ビジネスモデルを見直している
  13. 2026年3月期の業績|営業利益だけを見ると実態を誤解しやすい
  14. 2027年3月期第1四半期|売上は増えたが事業利益は減少
  15. 中期経営計画2029|「再構築」と「新価値創造」
  16. ワコールの将来性1|ボディデータを事業資産にできるか
  17. ワコールの将来性2|D2C・ECへ事業モデルを変えられるか
  18. ワコールの将来性3|海外ブランドとサイズ多様化
  19. ワコールの年収はいくら?ホールディングスと事業会社で大きく違う
  20. ワコールへの就職はおすすめ?企業文化との相性を見る
    1. ワコールに向いている可能性がある人
    2. 向かない可能性がある人
  21. ワコールで考えられる主な職種
  22. ワコールホールディングス株を投資視点で見るなら
    1. 配当は年間100円を維持する方針
  23. 京都企業として見るワコール|「人を知ること」を積み重ねた会社
  24. 企業文化シリーズで見るワコール
  25. よくある質問
    1. ワコールとワコールホールディングスは同じ会社ですか?
    2. ワコールは京都の会社ですか?
    3. ワコールの企業文化を表す言葉は?
    4. ワコールの強みは何ですか?
    5. ワコール人間科学研究開発センターとは?
    6. SCANBEとは何ですか?
    7. ワコールの平均年収はいくらですか?
    8. ワコールの将来性を見るポイントは?
  26. まとめ|ワコールの企業文化は「相互信頼」と人を知り続けること

ワコールとは?京都発のインナーウェア企業

ワコールは、京都市南区吉祥院に本社を置くインナーウェアを中心とした企業です。

創業は1946年6月15日。

創業者・塚本幸一氏が京都で「和江商事」を始めたことから歴史が始まります。

現在は「ワコール」という名前が、ブランド名、事業会社名、グループ全体を指す言葉として使われることがあるため、少し分かりにくくなっています。

まず会社構造を整理しましょう。

項目 ワコールホールディングス 株式会社ワコール
役割 ワコールグループ全体の経営管理 国内インナーウェアなどの事業会社
本社 京都市南区吉祥院中島町29 京都市南区吉祥院中島町29
現在の会社体制 2005年に旧・株式会社ワコールから商号変更 2005年に新設された100%子会社
代表 代表取締役 社長執行役員 矢島昌明氏 代表取締役 社長執行役員 川西啓介氏
従業員数 103人(単体)/14,784人(連結) 3,336人(単体)
証券コード 3591 非上場・ワコールホールディングス100%子会社

記事では「ワコール」でOK商品、歴史、企業文化を調べる読者にとっては「ワコール」の方が自然です。一方、株式・連結決算・IRについては上場会社である「ワコールホールディングス」の情報を確認する必要があります。

ワコールの歴史|1946年、戦後の京都から始まった

ワコールの創業者は塚本幸一氏です。

第二次世界大戦から復員した塚本氏は、1946年6月15日に京都へ戻り、その日のうちに商売を始めたとされています。

当初の商号は「和江商事」。

女性向けアクセサリーなどを扱っていました。

転機となったのが、1949年の「ブラパット」との出会いです。

戦後、日本女性の服装が和装から洋装へ大きく変わろうとしていました。

塚本氏は、婦人洋装下着という新しい市場に大きな可能性を感じます。

1950年には髙島屋京都店との取引を開始し、1951年には自社工場を開設。

販売だけではなく、自ら製品を作るメーカーへ進みました。

戦後の京都でインナーウェアづくりに取り組む日本人の縫製工房

「ワコール」という名前の由来

創業時の会社名は「和江商事」でした。

新しい商標を考える際、「和江」を永く留めたいという意味から「和江留」という発想が生まれ、そこから現在の「ワコール」という名前が作られました。

1953年に商標を「ワコール」へ変更し、1957年には社名もワコール株式会社となりました。

ワコールの主な歴史

  • 1946年:塚本幸一氏が京都で和江商事を創業
  • 1949年:和江商事株式会社を設立、「ブラパット」を取り扱う
  • 1950年:髙島屋京都店と取引開始
  • 1951年:自家製造を開始
  • 1953年:商標を「ワコール」へ変更
  • 1957年:ワコール株式会社へ商号変更
  • 1962年:「相互信頼経営」を確立
  • 1964年:人間科学研究を開始、株式上場
  • 1970年:韓国・タイ・台湾へ展開
  • 1981年:米国へ本格進出
  • 2005年:持株会社体制へ移行
  • 2019年:3Dボディスキャンを活用した新しい接客サービスを開始
  • 2025年:新技術「Melooop」を開発

ワコールの企業文化「相互信頼」とは?

ワコールの企業文化を象徴する最も重要な言葉が「相互信頼」です。

これは単に「仲良く働こう」という意味ではありません。

会社と社員。

社員同士。

会社とお客さま。

取引先。

株主。

地域社会。

こうしたステークホルダーがお互いを信頼することを、経営そのものの基盤とする考え方です。

1962年に「相互信頼経営」を断行

ワコールの歴史では、1962年が企業文化の大きな転換点です。

当時、労使関係が経営上の重要な課題になっていました。

創業者の塚本幸一氏は、人間を尊重するのであれば、まず会社側が従業員を信じる必要があると考えます。

そこで、遅刻や早退などの管理を社員の自主性に委ねる「相互信頼経営」を実行しました。

社員を細かな規則で縛るのではなく、信じて任せる。

その代わり社員側にも、自ら考えて責任を果たす姿勢が求められます。

この考え方が、後のワコールの組織文化を支える精神的な基盤になりました。

ワコールの企業文化「相互信頼」をイメージした日本人社員のデザイン会議

相互信頼を簡単にいうと「管理するから働く」のではなく、「信頼されているから自分で責任を果たす」という考え方です。ワコールでは、現在も顧客・従業員・取引先・株主・地域社会との関係を考える基礎として「相互信頼」が使われています。

創業者・塚本幸一氏の思想|平和と美しさを結びつけた

塚本幸一氏は、過酷な戦争体験から生還した人物です。

その経験から、残された人生を世のため、人のために役立てようと考えました。

そして、「女性が美しくしていられる社会こそ平和な社会」という信念から事業を始めています。

現在から見ると、創業時の理念には「女性」という対象が強く表れています。

一方、現在のワコールグループはその考え方をそのまま固定しているわけではありません。

2022年に新しいミッションを策定し、現在は性別や画一的な美しさだけではなく、一人ひとりが自分らしくいられることへ対象を広げています。

ここはワコールの企業文化を見るうえで重要です。

創業の精神を捨てるのではなく、時代に合わせて意味を広げているからです。

ワコールの企業文化の変化

  • 創業時:戦後社会の中で女性の美しさと豊かな生活を支える
  • 成長期:相互信頼を基盤に世界のワコールを目指す
  • 現在:一人ひとりの「自分らしさ」「からだ」「こころ」に寄り添う

ワコールの強み1|60年以上続く人間科学研究

ワコールの強みを考えるうえで、企業文化と同じくらい重要なのが人間科学研究です。

ワコールは1964年に「製品研究部」を設置し、日本人女性のからだを科学的に調査する研究を本格的に始めました。

現在の「ワコール人間科学研究開発センター」です。

毎年1,000人近くの身体を測定し、長期間にわたってデータを蓄積してきました。

現在までの計測データは、延べ約45,000人以上に及びます。

しかも単に身長やバストサイズだけを測る研究ではありません。

  • からだの形
  • 動き
  • 生理
  • 皮膚
  • 温熱
  • 衣服による圧力
  • 感覚
  • 心理
  • 生活スタイル

など、研究対象は広範囲です。

「下着を作る前に、人間を知る」。

ここがワコールのものづくりの大きな特徴です。

長期間、同じ人を測り続けたデータもある

ワコールの研究が興味深いのは、毎年異なる人を測るだけではなく、同じ人のからだが年齢とともにどのように変化するのかを追い続けてきたことです。

20代から50代までの体型変化を追跡した研究なども行われています。

こうした長期間のデータは、短期間では作ることができません。

長年、人間を観察し続けてきた時間そのものが、ワコールの参入障壁のひとつになっています。

ワコールの強み2|感性と科学を組み合わせる

ワコールの商品は、身体データだけで作られているわけではありません。

インナーウェアには、機能性だけでなく、デザイン、色、素材、着けたときの感覚なども必要です。

そこでワコールは、科学的な身体研究とクリエーターの感性を組み合わせています。

公式情報では200人を超えるクリエーターが商品企画・設計に関わっています。

つまりワコールのものづくりには、

人間科学 × デザイン × 縫製技術 × 接客

という複数の強みがあります。

「高い感性と品質」という言葉が現在のVISION2030にも使われているのは、このためです。

ワコールの強み3|販売員の接客知見までデータとして蓄積する

インナーウェアは、同じサイズ表記であれば誰にでも同じように合う商品ではありません。

体型、年齢、好み、着用目的によって合う商品は変わります。

そのため、ワコールでは店頭のビューティーアドバイザーによる接客も重要な強みになってきました。

現在は、長年の身体研究データに加えて、

  • 店舗でのお客さまの声
  • ECの購買データ
  • ビューティーアドバイザーの接客知見
  • 3Dボディスキャンのデータ

などを組み合わせ、より個人に合った商品・サービスを提供する方向へ進んでいます。

SCANBE|「測って売る」から「自分を知る」サービスへ

ワコールのデジタル戦略を象徴するサービスが「SCANBE(スキャンビー)」です。

3Dボディスキャナーを使い、短時間で身体を360度から計測します。

採寸データや体型特徴を確認でき、自分に合うインナー選びなどに活用できます。

2019年に始まった3D計測サービスは、単に販売員が採寸する代わりとなる技術ではありません。

利用者自身が、自分の身体をデータとして知るためのサービスへ進化しています。

現在の中期経営計画でも、SCANBEは新しい事業を作るための重要な資産として位置づけられています。

3Dボディスキャンと身体計測を行うワコールの人間科学研究をイメージした研究施設

ワコールが持つデータ資産

  • 1964年から蓄積した人間科学研究データ
  • 約45,000人以上の身体計測データ
  • SCANBEの3Dボディデータ
  • 店舗でのお客さまの声
  • EC・会員の購買データ
  • ビューティーアドバイザーの接客知見

「下着のワコール」から「からだとこころのソリューション企業」へ

現在のワコールグループは、自社の将来を単なるインナーウェアメーカーとは捉えていません。

中期経営計画2029では、インナーウェアを基盤としながら、ボディデータを活用した「エンパワーメント ソリューション」へ事業を進化させる方針を示しています。

対象となる領域は、

  • 快適
  • 健康

です。

下着を販売するだけではなく、自分のからだを知り、自分に合った選択ができ、自信を持って生活できるよう支援する。

これが現在のワコールが目指す方向です。

Melooop|下着メーカーの技術を自動車へ

現在のワコールで特に興味深い新事業が「Melooop(メループ)」です。

Melooopは、ワコールが開発した新しい立体成形技術です。

モノマテリアル、低廃棄、金型不要といった特徴を持ちます。

2026年5月には京都市南区に「Melooopラボ」を開設しました。

さらにBASFと協業し、自動車のアームレストを想定したコンセプトモデルを開発するなど、アパレル以外への展開も始まっています。

これは、企業文化の記事としてとても重要です。

長年培ってきた「身体に近い立体物を作る技術」を、インナーウェアだけでなく別の産業へ応用しようとしているからです。

ワコールの新しい姿ブラジャーを作るための技術を守るだけではなく、「身体にフィットする立体構造を作る」という技術の本質を取り出し、他産業へ広げようとしています。これは京都の技術企業にも共通する「強みを深掘りして別市場へ展開する」動きとして注目できます。

CW-X|人間科学から生まれたコンディショニングウェア

ワコールの研究がインナーウェア以外へ展開した代表例が「CW-X」です。

1991年、人間科学研究の知見を活用して開発されました。

スポーツや日常の身体活動を支えるコンディショニングウェアとして事業を広げています。

現在の中期経営計画でも、CW-Xは国内外で拡大する成長事業として位置づけられています。

ワコールを「女性用下着の会社」とだけ見ると、この事業の広がりを見落としてしまいます。

スポーツウェアと立体成形技術を研究するワコールの新規事業開発イメージ

現在のワコールは変革期|従来型ビジネスモデルを見直している

ここまで企業文化や強みを紹介してきましたが、現在のワコールグループが順調な成長企業というわけではありません。

むしろ、現在は大きな事業再構築の途中にあります。

国内ではインナーウェア市場の縮小、百貨店・量販店など従来型販売チャネルの変化、ECへの移行などが進んでいます。

海外では米国・欧州に成長余地がある一方、中国事業の低迷などの課題もあります。

そのため現在は、過去の成功モデルをそのまま続けるのではなく、

  • ブランド数・商品構成の見直し
  • D2C・ECの強化
  • 不採算事業の整理
  • 在庫削減
  • ボディデータを活用した新サービス
  • CW-Xの拡大
  • 新技術Melooopの事業化

などを進めています。

企業文化としての「相互信頼」を守りながら、事業の形を大きく変えられるかが現在の課題です。

2026年3月期の業績|営業利益だけを見ると実態を誤解しやすい

2026年3月期のワコールホールディングス連結業績は、売上収益1,715億10百万円でした。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,738億96百万円 1,715億10百万円
事業利益(損失) ▲34億37百万円 ▲4億61百万円
営業利益 32億88百万円 198億77百万円
親会社所有者帰属利益 72億18百万円 131億24百万円

ここで注意したいのが、「営業利益198億円」という数字です。

これだけを見ると、本業が大幅に回復したように見えます。

しかし、2026年3月期には新京都ビルなど固定資産の売却益が大きく寄与しています。

売上収益から売上原価と販管費を引いた事業損益は4億61百万円の赤字です。

ワコールの業績を見るなら「事業利益」も確認現在の事業そのものの収益力を見る場合、営業利益だけでなく事業利益を確認することが重要です。2026年3月期は赤字幅が大きく縮小したものの、本業ベースではまだ完全な収益回復には至っていません。

2027年3月期第1四半期|売上は増えたが事業利益は減少

2026年8月10日に発表された2027年3月期第1四半期では、売上収益は前年同期比8.8%増となりました。

項目 2027年3月期1Q 前年同期比
売上収益 489億5百万円 +8.8%
事業利益 15億78百万円 ▲34.3%
営業利益 18億12百万円 ▲90.8%
親会社所有者帰属利益 15億53百万円 ▲88.7%

営業利益が大幅減となっている主因は、前年同期に固定資産売却益が計上されていた反動です。

一方、事業利益も前年同期から減少しています。

国内ワコール事業は減収となり事業赤字でしたが、米国・欧州を中心とした海外事業は増収となっています。

現在は地域によって業績に大きな差があります。

中期経営計画2029|「再構築」と「新価値創造」

ワコールホールディングスは2026年6月、「中期経営計画2029」を公表しました。

期間は2027年3月期から2029年3月期です。

キーワードは、

Reconstruction(事業の再構築)

Innovation(新価値創造)

です。

既存の下着事業を立て直すだけでなく、SCANBEやMelooopなどを使って新しい事業を作る方針です。

指標 2029年3月期目標 2031年3月期 VISION2030
売上収益 2,010億円 2,170億円
事業利益 85億円 130億円
事業利益率 4.2% 6.0%
営業利益 93億円 138億円
ROE 4.3%以上 7.0%以上
ROIC 4.0%以上 6.5%以上

現在のワコールを見るうえでは、売上規模よりも本業の収益力を取り戻せるかが重要です。

ワコールの将来性1|ボディデータを事業資産にできるか

ワコールには、他のアパレル企業には簡単に作れない資産があります。

60年以上にわたって蓄積してきた身体データです。

これまで、このデータは主にブラジャーやガードルなどの商品開発に使われてきました。

しかし今後は、SCANBEやデジタルサービスを通じて、

  • 健康
  • ファッション
  • コンディショニング
  • 身体変化の可視化
  • パーソナライズサービス

へ利用領域を広げられる可能性があります。

「身体データを持つアパレルメーカー」から「身体データを活用するソリューション企業」へ進化できるかが、大きな将来性のポイントです。

ワコールの将来性2|D2C・ECへ事業モデルを変えられるか

従来のワコールは、百貨店や量販店などを通じて商品を販売する卸売型のビジネスを強みとしてきました。

しかし消費者の購買行動は大きく変化しています。

現在はECや直営店を通じ、ブランドが直接顧客とつながるD2Cの重要性が高まっています。

ワコールも中期経営計画で、B2B主体からD2Cへのチャネル転換を進めています。

相互信頼という企業文化を、デジタル上でも顧客との長期的な関係づくりへつなげられるかが重要です。

ワコールの将来性3|海外ブランドとサイズ多様化

ワコールグループは米国、欧州、中国、東南アジアなどで事業を展開しています。

欧州ではワコールヨーロッパに加え、2025年にBravissimoをグループ化。

2026年には米国で、大きなサイズの商品に強みを持つGlamoriseを買収しました。

これは単なる売上規模の拡大ではありません。

体型やサイズ、価値観の多様性に対応するブランド・商品を増やすことにもつながります。

現在の「一人ひとりの自分らしさに寄り添う」というミッションとの整合性も高い戦略です。

ワコールの年収はいくら?ホールディングスと事業会社で大きく違う

「ワコール 年収」を調べる場合、最も注意したいのがここです。

有価証券報告書には、ワコールホールディングスと株式会社ワコールの両方の数値が掲載されています。

項目 ワコールホールディングス 株式会社ワコール
従業員数 103人 3,336人
平均年齢 45.7歳 45.5歳
平均勤続年数 18.0年 16.8年
平均年間給与 6,204,157円 4,129,365円

2026年3月期の有価証券報告書では、ワコールホールディングス単体の平均年間給与は約620万円です。

一方、国内事業会社である株式会社ワコールは約413万円です。

かなり差があります。

これは会社の従業員構成が違うためです。

ワコールホールディングスは103人の持株会社で、グループ経営や管理業務を中心としています。

株式会社ワコールは3,000人を超える規模で、販売職などを含めさまざまな職種の社員が働いています。

「ワコールの平均年収」を1つの数字で断定しない転職サイトなどで表示される平均年収が、ワコールホールディングスなのか株式会社ワコールなのかを必ず確認してください。また平均年間給与には賞与・基準外賃金が含まれ、個人の実際の給与は職種・役職・勤務地・評価などによって異なります。

京都企業全体の年収を比較したい方は、京都企業の年収ランキング|任天堂・京セラ・村田製作所など給与水準を比較も参考になります。

ワコールへの就職はおすすめ?企業文化との相性を見る

ワコールへの就職を考える場合、「下着が好き」というだけではなく、企業文化との相性を見ることも大切です。

ワコールでは、相互信頼を基盤として、一人ひとりが自分で考え、変化へ挑戦することが求められています。

特に現在は、会社自身が事業モデルを大きく変えている途中です。

ワコールに向いている可能性がある人

  • 人のからだやこころに関心がある人
  • ファッションと科学の両方に興味がある人
  • 商品を通じて生活の質を高めたい人
  • データを活用した商品・サービス開発に関わりたい人
  • 顧客との長期的な関係を大切にしたい人
  • 自分で考え、行動する働き方をしたい人
  • 既存事業を変革する仕事に関心がある人
  • 京都発のグローバルブランドで働きたい人

向かない可能性がある人

  • 会社や事業の変化を避けたい人
  • 顧客とのコミュニケーションに関心が薄い人
  • ファッションや身体について学ぶことに抵抗がある人
  • 新しいデジタルサービスやD2Cへの変化を避けたい人
  • 指示された仕事だけを行いたい人

ワコールで考えられる主な職種

職種 主な仕事内容・専門性
商品企画・デザイン インナー、スポーツ、素材、ブランド企画など
研究開発 人間科学、身体計測、生理、心理、材料など
設計・パターン 身体にフィットする衣服設計、パターン技術など
マーケティング ブランド戦略、広告、CRM、顧客分析など
DX・IT EC、データ分析、アプリ、SCANBE、基幹システムなど
販売・接客 ビューティーアドバイザー、直営店など
SCM・生産 生産管理、品質、調達、物流など
新規事業 Melooop、ヘルスケア、ボディデータ活用など
管理部門 経営企画、人事、財務、法務、知財など

京都の大手企業への転職を検討している方は、京都の大企業転職ガイド|任天堂・京セラなど人気企業の特徴と難易度も参考になります。

ワコールホールディングス株を投資視点で見るなら

上場しているのは株式会社ワコールホールディングスです。

証券コードは3591

東京証券取引所プライム市場に上場しています。

投資で現在のワコールを見るなら、「有名ブランドだから安定」という見方だけでは不十分です。

現在は既存事業の収益力を立て直す途中だからです。

投資で確認したいポイント

  • 国内ワコール事業の事業利益
  • 在庫削減の進捗
  • EC・D2C比率
  • 米国・欧州事業の利益成長
  • 中国事業の構造改革
  • CW-Xの成長
  • SCANBEの事業化
  • Melooopなど新規事業
  • ROIC・ROE
  • 政策保有株式や不動産の縮減
  • PER・PBR
  • 配当

配当は年間100円を維持する方針

2026年3月期の年間配当は1株100円でした。

2027年3月期も年間100円を会社が予想しています。

中期経営計画2029でも、1株100円の配当を維持しながら自己株式取得を行う株主還元方針を示しています。

ただし、配当だけで投資判断をするのではなく、本業の事業利益が回復しているかを確認することが重要です。

投資に関する注意この記事はワコールグループや京都企業を理解するための一般的な企業研究記事です。特定銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。株式投資には元本割れの可能性があります。投資判断を行う場合は、最新のワコールホールディングス公式IR、決算資料、株価などをご確認ください。

京都企業として見るワコール|「人を知ること」を積み重ねた会社

ワコールは、任天堂や村田製作所、京セラのようなハイテク企業とは事業分野が大きく違います。

それでも、京都企業として共通する部分があります。

それは、ひとつの専門分野を長期間掘り下げる姿勢です。

村田製作所がセラミック材料を深く研究してきたように。

島津製作所が「はかる」科学技術を積み上げてきたように。

ワコールは「人のからだを知る」ことを60年以上積み上げてきました。

そして、その研究を商品や接客へつなげています。

技術そのものは違っても、「専門性を長く磨き、それを世界へ展開する」という点では京都企業らしい特徴があります。

京都企業が世界で強い理由については、京都企業はなぜ強い?世界で戦う技術企業が京都に集まる理由もあわせてご覧ください。

企業文化シリーズで見るワコール

京都企業を企業文化から比較すると、それぞれの特徴がより分かりやすくなります。

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よくある質問

ワコールとワコールホールディングスは同じ会社ですか?

現在は別会社です。旧・株式会社ワコールは2005年10月に株式会社ワコールホールディングスへ商号変更し、グループ経営を担う持株会社になりました。同時に現在の株式会社ワコールが新設され、国内事業を担っています。

ワコールは京都の会社ですか?

はい。1946年に京都で創業し、現在もワコールホールディングスと株式会社ワコールの本社は京都市南区にあります。

ワコールの企業文化を表す言葉は?

「相互信頼」が最も重要なキーワードです。会社と社員だけでなく、顧客、取引先、株主、地域社会などとの信頼関係を経営の基盤とする考え方です。

ワコールの強みは何ですか?

1964年から続けている人間科学研究、長期間蓄積した身体データ、商品設計・デザイン、販売員の接客知見、品質の高いものづくりなどが主な強みです。

ワコール人間科学研究開発センターとは?

人のからだとこころを研究するワコールの研究組織です。1964年に前身となる製品研究部を設置して以来、身体の形態だけでなく、動き、生理、感覚、心理など幅広い研究を続けています。

SCANBEとは何ですか?

ワコールが提供する3Dボディスキャンサービスです。身体を立体的に計測し、採寸データや体型特徴などを確認できます。現在はボディデータを活用した新しい顧客体験や事業展開にも使われています。

ワコールの平均年収はいくらですか?

2026年3月期では、ワコールホールディングス単体が平均6,204,157円、国内事業会社の株式会社ワコールが平均4,129,365円です。会社と従業員構成が異なるため、両者を混同しないことが重要です。

ワコールの将来性を見るポイントは?

国内インナーウェア事業の収益改善、EC・D2Cへの転換、SCANBEなどボディデータの活用、CW-X、Melooop、海外事業などが重要です。

まとめ|ワコールの企業文化は「相互信頼」と人を知り続けること

ワコールは、1946年に京都で創業した企業です。

第二次世界大戦から復員した塚本幸一氏が和江商事を始め、戦後の洋装化を捉えて婦人洋装下着事業へ進出しました。

ワコールの企業文化で最も重要なのは「相互信頼」です。

社員を信じる。

お客さまと信頼関係を築く。

取引先、株主、地域社会とも信頼を積み重ねる。

この考え方が、1962年以降ワコールの企業文化の基盤となっています。

そして、もうひとつの大きな特徴が「人を知り続けること」です。

ワコールは1964年から人間科学研究を続け、60年以上にわたり身体データを蓄積してきました。

現在、その研究はブラジャーやインナーウェアだけに使われているわけではありません。

SCANBE、CW-X、デジタルサービス、ヘルスケア、新技術Melooopなどへ活用範囲が広がっています。

創業時のワコールは、「女性の美しさを支える会社」として始まりました。

現在はそこからさらに対象を広げ、一人ひとりが自分らしくいられるよう、からだとこころに寄り添う企業へ変わろうとしています。

一方で、現在の経営状況は決して楽観できるものではありません。

国内インナーウェア市場の構造変化、販売チャネルの変化、中国事業などの課題があり、本業の収益力を立て直す必要があります。

中期経営計画2029では、既存事業の「再構築」と新しい価値を作る「Innovation」を両輪にしています。

つまり、現在のワコールは企業文化そのものも試されている時期です。

「相互信頼」という創業以来の精神を残しながら、過去の成功体験を手放して、新しい顧客、新しい技術、新しい市場へ進めるのか。

そこが、これからのワコールを見るうえで最も重要なポイントだと考えます。

この記事の要点

  • ワコールは1946年に京都で創業
  • 創業者は塚本幸一氏
  • 現在はワコールホールディングスと株式会社ワコールに分かれる
  • 企業文化の中心は「相互信頼」
  • 1962年に相互信頼経営を本格化
  • 1964年から人間科学研究を継続
  • 身体計測データは延べ約45,000人以上
  • SCANBEで3Dボディデータを活用
  • CW-XやMelooopなど下着以外にも事業を拡大
  • 2026年3月期は本業ベースで事業損失4億61百万円
  • 現在は既存事業の再構築と新価値創造の途中
  • 2029年3月期に売上収益2,010億円・事業利益85億円を目標
  • 将来性では身体データ、D2C、海外、新規事業が重要

ワコールの公式情報グループの企業理念・歴史・会社概要については、ワコールホールディングス公式サイトをご確認ください。

商品・サービス・SCANBEなどについては、ワコール公式サイトをご確認ください。

人間科学研究については、ワコール人間科学研究開発センターをご確認ください。

決算・中期経営計画・株式情報については、ワコールホールディングス公式IR情報をご確認ください。

ご利用にあたっての注意この記事は2026年9月1日時点で確認できるワコールホールディングス、株式会社ワコールの公式サイト、公式IR資料、有価証券報告書などをもとに作成しています。業績予想、平均年間給与、事業計画、採用情報、株価、配当などは変更される場合があります。就職・転職・投資などの判断を行う場合は、必ず最新の公式情報をご確認ください。

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